
写真左から、アドソル日進・山内義貴さん、ルネサステクノロジ・大垣健二さん、アドソル日進・伊藤綾夏さん、東京電力・小川崇さん、伊藤一輝さん。
地震、雷、火事、オヤジは古来、怖いものの代表。なかでも地震が原因となって発生する火事は二重に恐ろしいものです。95年の阪神淡路大震災でも多くの火災が発生しました。その中には電気が原因のものもありました。例えば、電気ストーブやアイロンなどに可燃物が覆い被さり、それと気づかないままに避難してしまったケース、地震で自動的に電気供給がストップし、その後、復旧した電気が電気器具に流れ、火災に繋がったケースなどが考えられます。
地震のときはガスの元栓だけでなく、電気のブレーカーを落とすというのが心得ですが、それを冷静に実行できる人は多くないはず。そうした背景から企画されたのが、東京電力の電源遮断システム「グラッとシャット」です。
システムは、地震の揺れをセンサーで検知する親機と、電源コンセントにさし込んで電気を遮断する子機からなります。両者の間は、近距離用のワイヤレス通信で結ばれ、震度5強程度を検知した親機からの通信で、子機が電源を切るようになっています。
これまでも分電盤に組み込むタイプの感震センサーはありましたが、「グラッとシャット」はコンセントに取り付けるだけで、工事が不要なため、既設住宅にも簡単に導入できるのがメリット。子機の増設も可能で、熱源となる電気器具と、照明、冷蔵庫や医療機器など地震下でも電源を切りたくない装置とを分けた使い方ができます。
「普段は快適に使っていただいている電気ですが、地震時の電気利用についても安心・安全性を高めることは電力供給事業者としての使命。電気器具メーカー任せにせず、率先して商品化することで、新しい電気利用の形を提案し、普及策も含めて市場創造への弾みをつけたかった」と語るのは、商品企画を担当した東京電力の小川崇さん。
現在のプロトタイプ機には、セットアップ時や地震感知時の状況を音声とLEDで知らせたり、停電時には親機内蔵のLEDが一定時間点灯して、暗い室内の行動をサポートする機能などもついています。
「せっかくの機器も設定が難しくては、お年寄りやハンディキャップのある方には使っていただけない。設定する必要がないように、可能な限り操作を簡単にしました。また実際の地震発生状況をさまざまに想定して、あるべき機能を絞り込むのにも苦心しました」というのは、機器内部の組み込みシステム全般を担当したのはアドソル日進の山内義貴さんです。
親機と子機が分かれているのは、地震感知の性能を高めるため。親機を室内の高い場所に設置することで、本体にモノが触れて不用意にセンサーが働くことがないようにしています。ただ、両者が分かれたことで、その間を何らかの形で繋ぐ必要がでてきます。
低消費電力で他の無線通信と干渉せず、かつ大きな家屋でも複数の子機で通信を中継できる(ホッピング)という利点から採用されたのが、ZigBee というワイヤレス通信規格。これまでも橋梁の歪みの計測やオフィスやビルの設備・機器の監視などに使われていますが、家庭用の安全器具に用いられるのは世界でもまだあまり例がありません。
「本機は家庭内で長期間にわたって使われることが予想されますし、しかも子機はたびたび移動されることもあります。それでも確実に通信できるよう、アンテナの形状や製品の耐久性には配慮しました。ロッドアンテナのように突き出したほうがアンテナ特性はよくなるのですが、それだと室内でじゃまになってしまうので、筐体内部に収めました」と、通信モジュールとネットワークの設計を担当したルネサステクノロジの大垣健二さんは開発の苦労を語っています。
「グラッとシャット」は、東京電力と空想生活が共同で進める「Switch! the design project」へ、エントリを想定している製品。
「コンセント周りで使う装置ですから、生活シーンにスマートに溶け込む必要があります。一般的なコンセントプレートの幅に合わせたサイズや、ホワイトベースの筐体の色、さらに柔らかなLEDの色、光量などは何度も関係者で試行錯誤を重ねています。全体的には、"さりげなくシンプル"を志向しました」と、デザイン・コンセプトを話すのは東京電力・伊藤一輝さん。
同製品のプロトタイプは現在、空想生活Webの「でんきTV」のコーナーに紹介され、デザインや利用法についてさまざまな意見が寄せられています。
「発売前の段階では、社内だけでレビューすることが多いのですが、ユーザーからダイレクトに素直なフィードバックをいただくのは、注目されているということで嬉しいですね」と、アドソル日進の伊藤綾夏さんは話しています。
Webでの反応を取り入れながら、いまプロジェクトチームは今夏の発売をめざし製品のブラッシュアップを急いでいるところ。防災に関係した省庁や東京都などにPRするとともに、東電営業エリア内の工事店や自治体を通じた普及体制づくりも検討中です。
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