空想マガジン
デザインの舞台裏 第9回 
the_division デヴィッド・トングさん

「現在はテキスタイルデザイナーのパートナーと共に『ザ・ディヴィジョン』というデザイン会社をロンドンに構えていますが、クライアントの大半は日本の企業。ですから東京はもちろん、日本によく来るんです」というのは、インダストリアルデザイナーのデヴィッド・トングさん。今回の来日にあわせて、空想生活のスタッフたちのもとを訪れてくれました。トングさんはイギリスやアメリカのデザイン会社で実績を積み、そこでたくさんの経験をなさったそうです。

デヴィッド・トングさん

プロセスは毎回違う

「デザインに対して企業として何を望むかは、ヨーロッパとアメリカでも違います。大別すれば、ヨーロッパはアート志向が、アメリカはビジネスの要素が強い。もちろんすべてにあてはまるわけではありませんし、大会社と規模の小さな会社でも、求めるものは違うものです。僕はクライアントとの距離を近くに保って、密にやりとりしたいという気持から、ザ・ディヴィジョンを設立しました」 なるほど、様々な国の様々な規模のクライアントと接したことが、トングさんにとって大きな財産になっているということですね。結果として同じデザインになるとしても、相手にあったプロセスをきちんと踏む、それが出来るのがドングさんの強みなのではないでしょうか。 「決まったプロセスというのは僕にはない。毎回、柔軟に対応しています。それが小さな規模のデザイン会社の強みだとも思うから。日本の企業がデザインに求めることは、ヨーロッパともアメリカともまた異なります。どう説明すればいいかな……日本は、作ることを楽しんでいるというか、まず作ってみて、反応を見る。常に新しいものを望んでいて、これは文化全体の傾向になっていると思えます。日本流のやり方を理解するのに時間はかかったけれども(笑)それは決してネガティブなことではなく、作り続けるなかで何かを見出そうとしているのでしょうね。」 確かに、「新商品」「新発売」という言葉がこれほどあふれている国はほかにないでしょう。コンセプト重視でリサーチに時間をかける西欧とは、根本的な違いがあるのだと、トングさんの指摘によって改めて気づかされます。

素材も色もアイデアの源

「日本の企業との関わりは、大企業であればBI(ブランドアイデンティティ)の構築を請け負っています。大企業にはデザイン部があって、大勢のデザイナーがそこにいますから、どの商品に対しても「その会社らしさ」を通すための構築が要となりますよね。小規模の会社に対してはBIのみならず具体的なプロダクトデザインをすることもあります。パートナーがテキスタイルデザイナーですから、カラーマテリアルの提案を行ったりもしますよ。形ありきではなく、素材や色から形を考えていくことも多い。普通とは逆のアプローチですけど、そこからユニークなデザインが生まれることがありますから」 デザインするのが楽しくて仕方がないというエネルギーが、トングさんからはあふれています。

世界規模でものづくりの方法を考え直すべき時期

嬉しいことに、空想生活にもそのエネルギーがやって来ている! というのも、「空想無印」に商品を提案してくれているんです。「メズラシートケイ415」「スパゲッティー」「ソラーニワ」。ひとつめは時計だとわかるけれども、あとのふたつは一体……??? 「スパゲッティーはケーブルを収納するもので、ケーブルってほら、パスタみたいでしょう? ソラーニワはエクステリア用の家具。夜には椅子が光るから、ニワでソーラー、ソラーニワ(笑)」 空想無印について、「本当に消費者が欲しいと望んでいるものをつくるシステム。とても面白い試み」とトングさんはおっしゃってくださいます。 「プロのデザイナーとそうでない人が同じ土俵にいることが、商品化というステップの時にどのように影響するのかということにも興味があります。世界規模でものづくりの方法を考え直すべき時期にきていると思うんです。たとえば、グローバルになっているからこそ、その土地でのものづくりが重要になると思う。アジアで大量生産された家電製品を西洋に運ぶエネルギーは多大です。現地で必要な分だけ現地で生産できることが可能になったら、ものづくりは大きく変わる。それにいまは家庭にもコピー機がある時代。平面と同じように、三次元のコピーが可能な機械が生まれたら、それもデザインにとって大変革になるでしょう」 確かに! 想像力と技術が一緒になって、新しいものを作り出していくことの面白さを、トングさんは実感している人でした。トングさんが提案している不思議な名前のプロダクト、すぐに空想無印でチェックしてみて下さい。