
――こんなものがあったらいいなとか、こんな事が出来るようになったらいいなとか、私たちはいろんなことに想像をめぐらせています。「想像が出来る、これこそ人間であることの最大の特権なんですよ」というのは、神戸大学大学院経営学研究科の教授、小川進さんです。
「僕のゼミの目標は、『自分の名前で看板を背負って生きていくこと』。そのために必要なのは、自分が何になったら楽しいかを考え、それがわかったら一歩踏み出すこと。でも、なれないとは誰も言っていないのに、自分で心の敷居を高くしてしまっていることが多いのです。そうじゃない、自分がなりたければ、何にでもなれるんだといつも言っています。頼もしい例もあって、僕のゼミから、医者になりたくて医学部に入り直した学生もいます。10年続ければ、誰でもその道のプロになれる、僕はそう信じていますから」
――小川さんの話を聞いて、思わず大きくうなずいてしまいました。なりたいと思ったら行動にうつす、その力こそ大事だということですね。ところで小川さん、30年後には何をしていたいですか?
「このまま大学にいたら、70歳までは働いていることになるだろうな。30年後、僕は73歳。悠々自適な生活を送っていたいですね」
――何をもって悠々自適と言えるでしょうか?
「それは……、行きたい時に行きたい所へ、お金のことを考えずに行ける状況。カレンダーを見て、『今日はクリスマスイブか、ディズニーランドに行って好きなだけ遊んで、ホテルのスイートルームに泊まろう』と思ったら、その通りに動けるようになっていたらいいですねぇ! もちろん食事も大満足の内容で(笑)。小川進であることの価値をまわりが認めてくれて、僕だからそのサービスを受けられるようでありたい。だって全員が出来ちゃったら、プレミア感に欠けますから(笑)」
――具体的な方法はイメージされていますか?
「具体的に、距離というものは今後縮まっていくというか、近くなると思います。個人用の飛行機の需要も今後は高まるでしょうし、移動することに対してのハードルはどんどん低くなるのではないでしょうか。たとえば、自動車の運転には現在は免許が必要ですが、自転車のように免許不要で誰でも乗れる時代がやってくることも充分あり得る。そうなると、移動が気軽になりますよね」
――小川さんがお話されると、何でも実現されそうな気がしますね!
「個人的な願望ですと、もうひとつ、年齢というハードルを超えることが出来るようになるといいですね。アンチエイジングならぬキープエイジングと名付けたらいいのかな。自分が戻りたい年齢に戻れるようになっていたら、素晴らしいと思いませんか。自分が一番輝いていたと思う年齢って、誰にとってもあるはずですから。戻るのは年齢だけで、時代はそのまま進んでいる。何回かトライアル出来て、ベストの年齢を選べるようになっていたら最高ですね。ウェラブルロボットを装着するという方法もありかも。現時点では笑い話かも知れないけれど、30年後には実現可能な事かも知れない、そう思うとワクワクします。年齢に対して、特に老いるということに対しての研究や開発は今後どんどん進化すると思います。いつ死ぬのか、その瞬間を自分で決められる時代も来るかもしれません」
――小川さんは、ユーザーイノベーションについての研究を、大学で行うと同時に、企業ともやりとりをしています。今後、ユーザーイノベーションはどのように定着していくかを聞いてみました。
「今後は、どれぐらいの数を生産するかというのが、ユーザーイノベーションがビジネスとして成立するか否かの分かれ目になってくるでしょう。アートと商品の境目とも言えますね。とは言え、消費者つまりユーザーが欲しいものが実際に形になる機会は、今後増えていくと思います。同時に、消費者同士が意見交換する場も増えるでしょう。法的な処理なども明確になれば、広く一般に認知されていくはずです」